税理士くららの『あれま⁉️』日誌

プロ仕様の税金物語。税理士くららのファンタジーワールドへようこそ。 税務のプロも悩むニッチな事例を集めた実務に役立つショートストーリーです。

★新人税理士が税務調査に立会います★

22.調査官が課税売上高少ないって言う

今日の調査立会いは花屋さん。

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和モダンなフラワーデザインが人気のお店です。

 

「ネットの売上が好調だけど、いろいろ手数料とかあるからね」

オーナーの愛里さん、今日は浮かない顔してるけど、基本ポジティブな人です。

 

小さな頃からの夢は、お花屋さんになること。

「花屋ってね・・・結構キビシイの。

仕入れがあるので朝は早いし、立ち仕事が普通で、お店の中はとっても寒いし。

だから私はデザインの勉強をして、どちらかというと裏方の仕事が中心だったの」

そうだったんですか。

 

「でも、夢だったから、お店を始めちゃった。

今は、どうしたらお客様にお花を買っていただけるか。

これだけを毎日考えています。大変でしょ」

うーむ。

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

落ち着いた雰囲気の調査官です。

徴収部門からの交流で、

「これまて滞納整理の経験しかありません」だって。

 

そういえば、うちの所長も現職のとき、徴収の経験があると言ってたね。

いろいろ経験したほうが絶対いいよね。

頑張ってね、調査官。

もちろん今回ではなく、別の調査でね・・・うふふ。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「消費税簡易課税の課税売上高が少なく計算されていると言われました。

 

調査官の指摘はこうです。

ネットで販売した商品売上高が手数料控除後の金額で計上されていますが、消費税の課税売上高は控除前の金額となります。

控除後の金額で計上しても、法人税の損益には影響はありませんし、消費税の計算も本則課税であれば問題はありません。

しかし、貴社のような簡易課税の場合は、課税売上高が少なく計上されることになるので、消費税の追徴税額が生じます

 

課税売上高の考え方を指導していませんでした。

私のミスです」

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「売上から費用を相殺して課税売上高としていれば、簡易課税の計算は誤りだね」

「それは・・・当然です」 

 

「ところで、ここは花の小売のほかにスタジオやイベントのデザインもやってたね。フラワー教室もある?

仕入税額計算は特例計算*1を使っているのかな?」

 

「いえ、第2種事業が70%で第5種事業が30%のため75%ルールは使えませんので、原則計算で申告しています」

 

「消費税の計算明細書と今回の売上もれの資料を見せてください」

 

・・・数分後

「これは追徴ではなく還付になるね」

「・・・?」

 

「今回指摘された売上もれを加算したら第2種事業は75%以上となるから、特例計算が使えるね。

この特例計算には届出は必要なく、継続要件もないからね。

だから結果として、課税売上高が増えても仕入控除税額がより大きく増えるので、申告した税額より少なくなるということだね」

 「・・・・」

「調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

*1:特例計算~2種類以上の事業を営む事業者で、1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができる。(通称『75%ルール』)

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