今日の調査立会いは土木工事の会社。
町長も輩出した地元の名門企業です。
「先生、儲かってます?」
後継ぎは外資系の証券会社に勤めていた孫。
東京から戻ってきて、すぐ専務になりました。
優秀だけど、お得意の財テクに力を入れすぎの感じ。
社業は安定しているけど、会社の将来、これでいい?
調査官が(来た!)
「おはようございます。
今日はよろしくお願いします」
ベテランのような雰囲気の調査官。
でも、若いはず。
社会人採用で、実はまだ新米なんだって。
へぇー、元証券マンですか。
最近は税務署の人もいろんな人がいる。
確かにこういう人は、貴重な即戦力かもね。
銀行員や外国語に強い商社の人とか。ITに強い人もいいだろうね。
おや、専務と話しが合うみたい。
出身の会社は違うけど、共通の知り合いがいるみたいだね。
投資の世界も狭いのかな。
・・・・・
調査開始
調査終了
・・・・・
くらら先生、事務所に戻る。
「所長、すみません。
非違の指摘を受けました」
「どういう内容?」
「消費税の課税売上割合の計算が違ってました。
調査官の指摘はこうです。
『 消費税非課税の社債の受取利子を、課税売上割合計算の分母に入れていない。
この金額を分母に入れて計算すると、課税売上割合は当然低くなるから、控除対象仕入れ税額は減って、消費税の追徴税額がでます』
専務が入社してから、投資資産が急増していたのに、チェック不足でした。
私のミスです」
「利子などの非課税収入が多ければ、課税売上割合は当然低くなるね。
そんなに多いの?利息の収入。
指摘された利息の明細を見せて下さい」
・・・数分後
「これは外債の利子だね。
ノルウェー地方金融公社、スウェーデン輸出信用銀行・・・北欧系の金融機関が発行した社債が多い。
なるほど、あの専務らしいね。
高利回りだし、資金に余裕があれば確かに魅力はある……けど。
リスクがあるよね、為替変動や信用リスクとか。
以前、彼が東京の会社にいたとき、私も勧められたのを思い出したよ。
調査の指摘だけど、これは逆に課税売上割合が高くなっちゃうね。
外債の受取利子は非課税資産の輸出取引に該当するので、課税売上割合の分母、分子に算入することになる。
だから、正しく計算すると課税売上割合は高くなるはず。
誤った申告だけど、消費税は追徴ではなく、還付だね」
「・・・・」
「調査官、間違ってるね」
「分母と分子に同じ金額を足すと…割合は当初より高くなる?
なるほど、となると…」
「あれま⁉️」