税理士くららの『あれま⁉️』日誌

プロ仕様の税金物語。税理士くららのファンタジーワールドへようこそ。 税務のプロも悩むニッチな事例を集めた実務に役立つショートストーリーです。

★新人税理士が税務調査に立会います★

20.調査官が外債の受取利息にケチつける

今日の調査立会いは土木工事の会社。

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町長も輩出した地元の名門企業です。

 

「先生、儲かってます?」

後継ぎは外資系の証券会社に勤めていた孫。

東京から戻ってきて、すぐ専務になりました。

優秀だけど、お得意の財テクに力を入れすぎの感じ。

社業は安定しているけど、会社の将来、これでいい?

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

ベテランのような雰囲気の調査官。

でも、若いはず。 

社会人採用で、実はまだ新米なんだって。

へぇー、元証券マンですか。

 

最近は税務署の人もいろんな人がいる。

確かにこういう人は、貴重な即戦力かもね。

銀行員や外国語に強い商社の人とか。ITに強い人もいいだろうね。

 

おや、専務と話しが合うみたい。

出身の会社は違うけど、共通の知り合いがいるみたいだね。

投資の世界も狭いのかな。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「消費税の課税売上割合の計算が違ってました。

 

調査官の指摘はこうです。

  消費税非課税の社債の受取利子を、課税売上割合計算の分母に入れていない。

この金額を分母に入れて計算すると、課税売上割合は当然低くなるから、控除対象仕入れ税額は減って、消費税の追徴税額がでます

 

専務が入社してから、投資資産が急増していたのに、チェック不足でした。

私のミスです」

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「利子などの非課税収入が多ければ、課税売上割合は当然低くなるね。

 

そんなに多いの?利息の収入。

 

指摘された利息の明細を見せて下さい」

 

・・・数分後

 

「これは外債の利子だね。

ノルウェー地方金融公社スウェーデン輸出信用銀行・・・北欧系の金融機関が発行した社債が多い。

 

なるほど、あの専務らしいね。

 

高利回りだし、資金に余裕があれば確かに魅力はある……けど。

リスクがあるよね、為替変動や信用リスクとか。

以前、彼が東京の会社にいたとき、私も勧められたのを思い出したよ。

 

調査の指摘だけど、これは逆に課税売上割合が高くなっちゃうね。

外債の受取利子は非課税資産の輸出取引に該当するので、課税売上割合の分母、分子に算入することになる。

だから、正しく計算すると課税売上割合は高くなるはず。

 

誤った申告だけど、消費税は追徴ではなく、還付だね」

 「・・・・」

 「調査官、間違ってるね」

 

「分母と分子に同じ金額を足すと…割合は当初より高くなる?

なるほど、となると…」

 

「あれま⁉️

 

  

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