税理士神宮寺くららの『あれま⁉️』日誌

プロ仕様の税金物語。税理士くららのファンタジーワールドへようこそ。 税務のプロも悩むニッチな事例を集めた実務に役立つショートストーリーです。きっぱり言います。『調査官、間違ってますよ!』

★今日も新人女性税理士が税務調査に立会います★

31.調査官が担保のある債権はダメだって言う

くらくらするほど眩しい一日でした。

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今日の調査立会いは住宅設備機器の卸会社。

創業100年の老舗です。

 

「うちの商売も年々難しくなってきてね。今回が私の最後の税務調査になるかもしれない」

いきなり何でしょう?

 

「実はお誘いがあってね。悪い話ではないと思うんだけど、どうしたもんかね」

まさか身売り? M&Aということですか?

 

好況とは言えないけど、営業利益は確保しています。

何より無借金経営の安定企業ですよね。

 

あれっ、事務室のウオーターサーバーが

・・・無くなっている。

どこかで聞いたことがあります。

こういう小さなことが、企業身売りの前兆なんだって。

うーむ。

 

 調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

年配の調査官です、

白髪だからか・・・おじいさんに見えます。

 

そうですか、再雇用ですか。ということは定年後の人だから60歳を超えてる。

大変ですね。私はそこまで働けるかな?

いや、人生100年時代なんだから、当然現役だよねー。

 

でも、この人、覇気がなさすぎじゃない?

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「貸倒損失は担保を処分するまでは計上できない。

調査官の指摘はこうです。

税務上の貸倒損失については、担保物がある場合はそれを処分した後でなければ計上できません。

貴社は相手方が所有する土地に抵当権を設定していますので、たとえ劣後であったとしてもその担保物が処分されるまでは貸倒れの処理はできません

担保物があることを確認していませんでした。

私のミスです」

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「税務上の貸倒れの処理については、かなり厳しい取扱いになってるね。

原則的には、担保物の処分後でなければ、全額回収不能かどうかという判断はできないから、処分するまでは貸倒れの処理はできないだろうね」

「それは・・・理解してます」 

 

「いま原則的にはと言ったのは、状況によっては取り扱いが異なるということです。

 指摘された売掛債権の資料を見せてください」

 

・・・数分後

「この貸倒れの処理は問題ないね。

たしかに抵当権の設定はあるけど、抵当権順位は第5順位で、この土地が処分されたとしても、当社に配当の見込みは全くないね。

相手先はほかに資産もないし、支払い能力もないから全額を回収できないのは明らかですね」

 

「もともと設定は名目的なものだったようです。評価額が低いうえに優先債権が多いですから」

 

「少し前までは、担保物を処分しなければ貸倒れの処理はダメという取扱いだったけど、今は弾力的に扱うこととされているんだ。

国税庁のホームページにも*1質疑応答事例として載っているよ。

だから、この貸倒損失は全く問題ないということです。

 

調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

*1:担保物の適正な評価額からみて、その劣後抵当権が名目的なものであり、実質的に全く担保されていないことが明らかである場合には、担保物はないものと取り扱って差し支えありません。

30.くららが友達の保育士と飲む

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「くらら、どう?このビール」

ビールはあんまり得意じゃないけど、これはクリーミーな口当たりで飲みやすい。

幼なじみの愛美は保育士。

最近クラフトビールに凝ってるんだって。

 

「フルーティな香りでしよ? ヴァイツェンという種類のクラフトビールなの。ここの熟成赤身肉ともバッチリ合うんだよね」

 

確かにバナナような甘い香りですね。苦みも少ないので、スッと飲める。

アルコール度数がチョットと低いのかな。

軽くてとってもイイ感じのお酒です。

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 「ところで税理士さんに、チョット聞いていい?

保育園の給食費は消費税かからないんでしょ。

でも幼稚園に勤める同期が言うには、幼稚園は課税だって言うの。

保育園も幼稚園も同じはずだよね。

 

「・・・?」

給食費というより、そもそも保育園とか幼稚園の保育料の消費税は、課税?非課税?

どっちだっけ。

全くわかりません。

 

これまでフツーの会社の税務の経験しかないんですよね、新米税理士の私。

学校法人・・・社会福祉法人・・・。

うーむ。

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調べました。

保育園とか幼稚園の保育料に、消費税の課税はありません。

学校の授業料が非課税なのと同じですね。

 

給食費は?

保育園や認定こども園などの給食費は非課税です。

ただ、私学助成を受ける幼稚園の給食費は課税*1ですね。(ついでに言うと、これは軽減税率の適用です)

お迎えのスクールバスも課税です。

愛美の同期のコの幼稚園は、こういう幼稚園なんだね。

 

同じようでも違うんです。

消費税はやっぱり複雑ですね。

 

(ふう-っ・・・

          勉強になります❗️)

*1:消費税が課税となる収入があっても1,000万円以下であれば免税業者となるので、よほど大きな園でなければ申告納付の義務はありません。

29.調査官が課税売上高少ないって言う

くらくらするほど眩しい一日でした。

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今日の調査立会いは花屋さん。

和モダンなフラワーデザインが人気のお店です。

 

「ネットの売上が好調だけど、いろいろ手数料とかあるからね」

オーナーの愛里さん、今日は浮かない顔してるけど、基本ポジティブな人です。

 

小さな頃からの夢は、お花屋さんになること。

「花屋ってね・・・結構キビシイの。

仕入れがあるので朝は早いし、立ち仕事が普通で、お店の中はとっても寒いし。

だから私はデザインの勉強をして、どちらかというと裏方の仕事が中心だったの」

そうだったんですか。

 

「でも、夢だったから、お店を始めちゃった。

今は、どうしたらお客様にお花を買っていただけるか。

これだけを毎日考えています。大変でしょ」

うーむ。

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

落ち着いた雰囲気の調査官です。

徴収部門からの交流で、

「これまて滞納整理の経験しかありません」だって。

 

そういえば、うちの所長も現職のとき、徴収の経験があると言ってたね。

いろいろ経験したほうが絶対いいよね。

頑張ってね、調査官。

もちろん今回ではなく、別の調査でね・・・うふふ。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「消費税簡易課税の課税売上高が少なく計算されていると言われました。

 

調査官の指摘はこうです。

ネットで販売した商品売上高が手数料控除後の金額で計上されていますが、消費税の課税売上高は控除前の金額となります。

控除後の金額で計上しても、法人税の損益には影響はありませんし、消費税の計算も本則課税であれば問題はありません。

しかし、貴社のような簡易課税の場合は、課税売上高が少なく計上されることになるので、消費税の追徴税額が生じます

 

課税売上高の考え方を指導していませんでした。

私のミスです」

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「売上から費用を相殺して課税売上高としていれば、簡易課税の計算は誤りだね」

「それは・・・当然です」 

 

「ところで、ここは花の小売のほかにスタジオやイベントのデザインもやってたね。フラワー教室もある?

仕入税額計算は特例計算*1を使っているのかな?」

 

「いえ、第2種事業が70%で第5種事業が30%のため75%ルールは使えませんので、原則計算で申告しています」

 

「消費税の計算明細書と今回の売上もれの資料を見せてください」

 

・・・数分後

「これは追徴ではなく還付になるね」

「・・・?」

 

「今回指摘された売上もれを加算したら第2種事業は75%以上となるから、特例計算が使えるね。

この特例計算には届出は必要なく、継続要件もないからね。

だから結果として、課税売上高が増えても仕入控除税額がより大きく増えるので、申告した税額より少なくなるということだね。

 

調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

*1:特例計算~2種類以上の事業を営む事業者で、1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができる。(通称『75%ルール』)

28.調査官が監査役の給与を否認するって言う

くらくらするほど眩しい一日でした。

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今日の調査立会いはウェブサイトの運営会社。

バイト求人などの人材系サイトがメインです。

 

もともと情報システム学科の仲間が集まって始めた会社で、今でも大学のサークルのような雰囲気です。

社長もゾゾの前澤さんのような感じだし。

 

「くらら先生。今も『黒猫のウィズ』やってる?」

忙しくて、とてもそんな時間はありませんし、もう飽きました。

 

「先生がハマりそうなゲーム教えてあげますか?美肌にもいいやつ」

美肌?ウソでしよ?

 

相変わらず、調子がいいというか、元気ですね。

・・・いいことです。

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

何だかオタクっぽい調査官。

目を落として会話してるし。

社長にゲーマーとゲームオタクの違いを語りはじめた。

だから自分はゲーマーなんだって。

 

おや、最初と違う。表情も明るくなって、イキイキしてきた。

やっぱりオタクなのかな。

 

でもこういうヒト、結構やり手なことが多いんだってね。

 

しっかり対応しなければ。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「非常勤の監査役の給与は事前確定給与届出が出ていないので、損金にならないと言われました。

調査官の指摘はこうです。

 

役員に対して給与を年1回支給する場合は、税務署に前もって「事前確定届出給与」の届出をしなければ損金になりません。

貴社は非常勤の監査役に対して年1回給与を支給していますが、この届出をしていません。

よって、この給与は、損金にできません。

 

「役員給与の支給状況を確認していませんでした。

私のミスです」

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「役員の給与は、毎月同額の支給でなければ損金にならないのが基本です。いわゆる定期同額給与というものです。

ですから、夏冬などの役員賞与は、損金にならないことになります。

ただこの場合「事前確定届出給与」の届出書を提出していれば、損金にできる制度があります。

非常勤の役員などに年1回所定の時期に支給するようなものも、同様ですね」

 

「それは・・・基本的なことですから、理解してます」 

 

「・・・ところで、そもそもこの法人は同族会社だったっけ?」

 

「あれっ...そうでした。

大学仲間が皆んなで出資して作った会社で、非同族でした」

 

「であれば、税務署への届出なしで損金になります。「事前確定届出給与」が必要なのは同族会社の場合です。

要するに、定期給与を支給しない非常勤役員に対して、たとえば12月の年1回給与を支払う定めがあるような場合、非同族会社であれば、問題はないということです。

 

中小企業は同族会社が多いので、つい勘違いしてしまうんだね。

 

調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

27.調査官が中小企業倒産防止共済の前納掛金にケチつける

くらくらするほど眩しい一日でした。

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今日の調査立会いは葬儀屋さん。

 

「おっはー!

先生、今日は頼んだよー」

 

社長の奥さん、

いつも明るく賑やかで、辛口の物言いもする、大阪のおばちゃんって感じの人。

 

葬儀の司会者としても結構評判がいいらしいけど、

この人が真面目な顔してやってるかと思うと...。

不謹慎だけど笑っちゃいそう。

 

そんな憎めない奥さん。

調査官に変なこと言わないでね。

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

ボウズ頭の調査官。筋トレが趣味なんだって。

スリム体型だけど、しっかりと筋肉はありそうな感じ。

 

「奥さん、仏壇屋からのリベート収入、年間どのくらいあります?」

 

いきなり、真正面から聞いてきた。

この調査官、たぶん相手の反応を見てるんだろうなー。

 

しっかり対応しなければね。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「前納した中小企業倒産防止共済の掛金は、当期の損金にならないとのことです。

 

調査官の指摘はこうです。

 短期前払費用は、支払った日から1年以内に役務の提供を受ける場合には、その支払った事業年度の損金になります。

この短期前払費用は、継続的な支払を前提条件とするもので、貴社はこの継続要件を充たしていません。

よって、前納した掛金は短期前払費用の適用はなく、当期の損金にできません

 

「期末処理のチェックが不足してました。

私のミスです」

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「中小企業倒産防止共済は、掛金が全額損金になり、一定期間加入すれば解約しても全額が返ってくるという使い勝手のよい制度です。

本来の目的は、取引先の倒産により資金繰りが苦しくなったときに借入ができるということなのですが。

 

この共済掛金の前納分は、租税特別措置法の特例により、前納分であっても期間対応させることなく、掛金を現実に支払った事業年度の損金とするとされています。

この規定には継続適用の要件はありません。

 

誤解があるようですが、短期前払費用の適用により当期の損金にしているわけではありませんので、その年その年で変えても構わないのです。

 

前納した掛金は当期の損金となりますので、全く問題ありません。

 

調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

★★当サイトのストーリーは、架空の題材によるフィクションです★★