税理士くららの『あれま⁉️』日誌

プロ仕様の税金物語。税理士くららのファンタジーワールドへようこそ。 税務のプロも悩むニッチな事例を集めた実務に役立つショートストーリーです。

★新人税理士が税務調査に立会います★

25.調査官がソフトクリームを好きだって言う

今日の調査立会いは洋菓子店。

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ソフトクリームが人気です。

 

タカトシのテレビに出たせいで、土日はソフトクリームで行列なの」

見ましたよ、タカトシランドですね。

ママと呼ばれるこの店のオーナー、まもなく喜寿を迎えるお年のはず。

お元気ですけど、何だかお疲れのご様子。

 

「アポなし取材って、本当に突然来るのね。びっくりしちゃったわ」

・・・そうなんですか。

 

人気のソフトクリームは、なめらかミルクのたっぷり系。でも後味はさっぱり。

それでお値段は何と200円という低価格。

売れますよね、当然。

 

 調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

女性調査官です。私よりチョット年上かな。

「ソフトクリームが大好きで、私、先週ここで並んで食べました」

ママがうれしそうですね。

でもそれって内偵?

 

おや、ママがソフトクリームを勧めてる。

調査官は必死に断ってるけどね。

食べちゃうといろいろあるんでしょ。きっと。

でもせっかくだから、どうぞ食べてね。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「受贈益の計上もれです。

冷蔵ショーケースをメーカーから無償でもらってましたが、そのことを記帳していませんでした。

 

調査官の指摘はこうです。

販売業者がメーカーから冷蔵庫等の資産を無償で取得した場合には、そのメーカーにおける取得価額を受贈益として収益に計上しなければなりません。

メーカー名が入ったこの冷蔵ショーケースは、広告宣伝用資産になるので取得価額の3分の2の金額で*1受増益を計算することになります

新しいショーケースはありましたが、十分な確認をしていませんでした。

私のミスです」

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「無償でもらった広告宣伝用資産でも、その金額なら収益として計上しなければならないね」 

 

「確かにそうでした。

・・・でも、事業の用に供していることは間違いないので、減価償却費は認めてもらいました。

その結果、増差所得は減りました」

 

「ほー、認めてくれた。うーん、でも、それ、ちょっと違うんだなー。

7の5の1だね」

はー・・・?

「基本通達7-5-1です。

これを知ってるかで、だいたいわかるんです。詳しいかどうか」

ふー・・・そんなもんですか。

 

「贈与により取得した資産を全く記帳していない今回のような場合には、償却費とした金額がないので、減価償却はできないんだね。

これが取得価額を税務上の低い金額で計上していた場合なら、その税務上の満たない金額を減価償却したものとみなして計算できるんだけどね。

要するに資産が簿外ではダメだということ。

結果として今回は受贈益の全額が増差になるということです」

 「・・・・」

 「調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

*1:金額が30万円以下であるときは、受贈益は計上しなくてよい。

★当サイトのストーリーは、架空の題材によるフィクションです★