税理士くららの『あれま⁉️』日誌

プロ仕様の税金物語。税理士くららのファンタジーワールドへようこそ。 税務のプロも悩むニッチな事例を集めた実務に役立つショートストーリーです。

★新人税理士が税務調査に立会います★

21.くららが友達の保育士と飲む

焼肉屋さんで・・・f:id:rarara0001:20191013101650j:plain

「くらら、どう?このビール」

ビールはあんまり得意じゃないけど、これはクリーミーな口当たりで飲みやすい。

幼なじみの愛美は保育士。

最近クラフトビールに凝ってるんだって。

 

「フルーティな香りでしよ? ヴァイツェンという種類のクラフトビールなの。ここの熟成赤身肉ともバッチリ合うんだよね」

 

確かにバナナような甘い香りですね。苦みも少ないので、スッと飲める。

アルコール度数がチョットと低いのかな。

軽くてとってもイイ感じのお酒です。

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 「ところで税理士さんに、チョット聞いていい?

保育園の給食費は消費税かからないんでしょ。

でも幼稚園に勤める同期が言うには、幼稚園は課税だって言うの。

保育園も幼稚園も同じはずだよね。

「・・・?」

給食費というより、そもそも保育園とか幼稚園の保育料の消費税は、課税?非課税?

どっちだっけ。

全くわかりません。

 

これまでフツーの会社の税務の経験しかないんですよね、新米税理士の私。

学校法人・・・社会福祉法人・・・。

うーむ。

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調べました。

保育園とか幼稚園の保育料に、消費税の課税はありません。

学校の授業料が非課税なのと同じですね。

 

給食費は?

保育園や認定こども園などの給食費は非課税です。

ただ、私学助成を受ける幼稚園の給食費は課税*1ですね。(ついでに言うと、これは軽減税率の適用です)

お迎えのスクールバスも課税です。

愛美の同期のコの幼稚園は、こういう幼稚園なんだね。

 

同じようでも違うんです。

消費税はやっぱり複雑ですね。

 

(ふう-っ・・・

          勉強になります❗️)

*1:消費税が課税となる収入があっても1,000万円以下であれば免税業者となるので、よほど大きな園でなければ申告納付の義務はありません。

20.調査官が外債の受取利息にケチつける

今日の調査立会いは土木工事の会社。

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町長も輩出した地元の名門企業です。

 

「先生、儲かってます?」

後継ぎは外資系の証券会社に勤めていた孫。

東京から戻ってきて、すぐ専務になりました。

優秀だけど、お得意の財テクに力を入れすぎの感じ。

社業は安定しているけど、会社の将来、これでいい?

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

ベテランのような雰囲気の調査官。

でも、若いはず。 

社会人採用で、実はまだ新米なんだって。

へぇー、元証券マンですか。

 

最近は税務署の人もいろんな人がいる。

確かにこういう人は、貴重な即戦力かもね。

銀行員や外国語に強い商社の人とか。ITに強い人もいいだろうね。

 

おや、専務と話しが合うみたい。

出身の会社は違うけど、共通の知り合いがいるみたいだね。

投資の世界も狭いのかな。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「消費税の課税売上割合の計算が違ってました。

 

調査官の指摘はこうです。

  消費税非課税の社債の受取利子を、課税売上割合計算の分母に入れていない。

この金額を分母に入れて計算すると、課税売上割合は当然低くなるから、控除対象仕入れ税額は減って、消費税の追徴税額がでます

 

専務が入社してから、投資資産が急増していたのに、チェック不足でした。

私のミスです」

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「利子などの非課税収入が多ければ、課税売上割合は当然低くなるね。

 

そんなに多いの?利息の収入。

 

指摘された利息の明細を見せて下さい」

 

・・・数分後

 

「これは外債の利子だね。

ノルウェー地方金融公社スウェーデン輸出信用銀行・・・北欧系の金融機関が発行した社債が多い。

 

なるほど、あの専務らしいね。

 

高利回りだし、資金に余裕があれば確かに魅力はある……けど。

リスクがあるよね、為替変動や信用リスクとか。

以前、彼が東京の会社にいたとき、私も勧められたのを思い出したよ。

 

調査の指摘だけど、これは逆に課税売上割合が高くなっちゃうね。

外債の受取利子は非課税資産の輸出取引に該当するので、課税売上割合の分母、分子に算入することになる。

だから、正しく計算すると課税売上割合は高くなるはず。

 

誤った申告だけど、消費税は追徴ではなく、還付だね」

 「・・・・」

 「調査官、間違ってるね」

 

「分母と分子に同じ金額を足すと…割合は当初より高くなる?

なるほど、となると…」

 

「あれま⁉️

 

  

19.調査官が監査役の給与を否認するって言う

今日の調査立会いはウェブサイトの運営会社。

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バイト求人などの人材系サイトがメインです。

 

もともと情報システム学科の仲間が集まって始めた会社で、今でも大学のサークルのような雰囲気です。

社長もゾゾの前澤さんのような感じだし。

 

「くらら先生。『FGO』やってる?」

うーん・・・忙しくて、なかなか時間がね。

 

「先生がハマりそうなゲーム教えてあげますか?美肌にもいいやつ」

美肌?ウソでしよ?

 

相変わらず、調子がいいというか、元気ですね。

・・・いいことです。

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

何だかオタクっぽい調査官。

目を落として会話してるし。

社長にゲーマーとゲームオタクの違いを語りはじめた。

だから自分はゲーマーなんだって。

 

おや、最初と違う。表情も明るくなって、イキイキしてきた。

やっぱりオタクなのかな。

 

でもこういうヒト、結構やり手なことが多いんだってね。

 

しっかり対応しなければ。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「非常勤の監査役の給与は事前確定給与届出が出ていないので、損金にならないと言われました。

調査官の指摘はこうです。

 

役員に対して給与を年1回支給する場合は、税務署に前もって「事前確定届出給与」の届出をしなければ損金になりません。

貴社は非常勤の監査役に対して年1回給与を支給していますが、この届出をしていません。

よって、この給与は、損金にできません。

 

「役員給与の支給状況を確認していませんでした。

私のミスです」

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「役員の給与は、毎月同額の支給でなければ損金にならないのが基本です。いわゆる定期同額給与というものです。

ですから、夏冬などの役員賞与は、損金にならないことになります。

ただこの場合「事前確定届出給与」の届出書を提出していれば、損金にできる制度があります。

非常勤の役員などに年1回所定の時期に支給するようなものも、同様ですね」

 

「それは・・・基本的なことですから、理解してます」 

 

「・・・ところで、そもそもこの法人は同族会社だったっけ?」

 

「あれっ...そうでした。

大学仲間が皆んなで出資して作った会社で、非同族でした」

 

「であれば、税務署への届出なしで損金になります。「事前確定届出給与」が必要なのは同族会社の場合です。

要するに、定期給与を支給しない非常勤役員に対して、たとえば12月の年1回給与を支払う定めがあるような場合、非同族会社であれば、問題はないということです。

 

中小企業は同族会社が多いので、つい勘違いしてしまうんだね」

「・・・・」

「調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

18.調査官が中小企業倒産防止共済の前納掛金にケチつける

今日の調査立会いは葬儀屋さん。

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 「おっはー!

先生、今日は頼んだよー」

 

社長の奥さん、

いつも明るく賑やかで、辛口の物言いもする、大阪のおばちゃんって感じの人。

 

葬儀の司会者としても結構評判がいいらしいけど、

この人が真面目な顔してやってるかと思うと...。

不謹慎だけど笑っちゃいそう。

 

そんな憎めない奥さん。

調査官に変なこと言わないでね。

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

ボウズ頭の調査官。筋トレが趣味なんだって。

スリム体型だけど、しっかりと筋肉はありそうな感じ。

 

「奥さん、仏壇屋からのリベート収入、年間どのくらいあります?」

 

いきなり、真正面から聞いてきた。

この調査官、たぶん相手の反応を見てるんだろうなー。

 

しっかり対応しなければね。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「前納した中小企業倒産防止共済の掛金は、当期の損金にならないとのことです。

 

調査官の指摘はこうです。

 短期前払費用は、支払った日から1年以内に役務の提供を受ける場合には、その支払った事業年度の損金になります。

この短期前払費用は、継続的な支払を前提条件とするもので、貴社はこの継続要件を充たしていません。

よって、前納した掛金は短期前払費用の適用はなく、当期の損金にできません

 

「期末処理のチェックが不足してました。

私のミスです」

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「中小企業倒産防止共済は、掛金が全額損金になり、一定期間加入すれば解約しても全額が返ってくるという使い勝手のよい制度です。

本来の目的は、取引先の倒産により資金繰りが苦しくなったときに借入ができるということなのですが。

 

この共済掛金の前納分は、租税特別措置法の特例により、前納分であっても期間対応させることなく、掛金を現実に支払った事業年度の損金とするとされています。

この規定には継続適用の要件はありません。

 

誤解があるようですが、短期前払費用の適用により当期の損金にしているわけではありませんので、その年その年で変えても構わないのです。

 

前納した掛金は当期の損金となりますので、全く問題ありません」

「・・・・」

「調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

17.調査官がパソコンの耐用年数違うって言う

今日の調査立会いは産業機械の精密部品を作ってる会社。

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世界規模のシェアを誇る、知る人ぞ知るメーカーです。

 

経理課の皆さん。

本日の税務調査、準備のほうは万全でしょうか。

なんかバタバタしてるように見えますが。

 

プロジェクターにスクリーン?

会社概況を、これで調査官に説明する?

プレゼンじゃないんだから、ここまでしなくてもいいと思うけどね。

 

ここの事務方は昔から優秀な人ばかりだから、大丈夫だね、きっと。

 

 

調査官が(来た!)

 

「おはようございます。

今日はよろしくお願いします」

 

国税局調査部の人が五人。どの人もバリバリ中堅職員という感じ。

そこそこ大きな会議室だけど、圧迫感が満ちてます。

 

ほー、さすが、相当勉強してきましたね、局の人。業界と業態を。

質問が高度で専門的ですね。

事務方じゃ答えられないような技術的なことまで聞いてる。

けど、そんなこと税務調査に必要なんでしょうか。

 

でも、ここはスタッフに任せて、黙ってよーっと。

・・・・・

調査開始   

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調査終了

・・・・・

くらら先生、事務所に戻る。

 

「所長、すみません。

非違の指摘を受けました」

「どういう内容?」

 

「去年一新したパソコンの耐用年数が違ってました。

 

調査官の指摘はこうです。

 電子計算機の耐用年数を4年として償却しています。

たしかにパソコンの法定耐用年数は通常4年ですが、サーバーなんかは5年になります。

貴社の取得したもので金額の大きなものは、サーバーやワークステーションです。よって、耐用年数は5年ですから、4年は誤りです。

減価償却費の超過額が生じます

 

「単純なところのチェックが不足してました。

私のミスです」

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 「ここは、グループ法人も多いし、海外取引もかなりあるから、調査項目の範囲は広いよね。国際税務調査官も来てたって?

複雑な取引については、時間をかけて監査をするんだが、単純なミスを見落とすことはままあるもんだ。

特に今回は経理スタッフも大幅に変わっているしね。

 

会計システムも今回自社開発したんだっけ?

固定資産の管理システムも相当変えたと聞いてるよ。

 

指摘された減価償却の明細を見せて下さい」

 

・・・数分後

「これはシステムに重大なケアレスミスがあるかもね。

見てごらん。

何と、耐用年数4年の償却率が5年と同じ0.400になってるね。

(正しい4年の償却率は0.500)

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明らかにシステムの作成誤りだね。

 

だから、耐用年数を4年としたのは誤っていたけど、償却率は0.400を適用していたから(結果として正しく)結局のところ増差はないという…何とも想定できないことになってしまった。

 

調査官は、そこまで確認してなっかたようだね」

 「・・・・」

 「調査官、間違ってるね」

 

「あれま⁉️

 

  

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